ウサギの避妊手術について
ウサギの卵巣子宮疾患の発生率は非常に高く、6歳から7歳で60%から70%程度の高率で罹患するとされており、私の経験では5歳から6歳ではほぼ100%のウサギが何らかの疾患を卵巣子宮に抱えているように思われます。このような状況から当院ではウサギの避妊手術を強く推奨しています。1歳から3歳頃までに手術を受けて頂きたいと思います。
生後半年から1歳程度までの実施を推奨する文献があり私も支持していますが、最近の私は成長が完了し体が完全に出来上がりストレスへの耐性が向上した1歳以上3歳程度までの手術をお勧めしています。
避妊手術を強く推奨できるようになった背景には、手術で使用する麻酔の安全性の向上が挙げられます。現在のウサギへの麻酔では、V-gel(動物専用声門上気道確保デバイス)と呼ばれる器具を用いるようになっていますが、これは口の中にチューブ状の器具を差し入れることで、麻酔中の呼吸の管理を行うことが可能となる器具です。この器具のおかげで心電図などに加えて麻酔中の呼吸状態のモニターが正確にできるようになり、また万が一呼吸が止まったとしても人工呼吸を開始する事が出来るようになりました。血圧や血中酸素飽和度のモニター等も行っています。
そのほか、麻酔の前に事前に複数の種類の鎮痛剤や鎮静剤を組み合わせて投与することで緊張によるストレスや痛みによるストレスを可能な限り軽減することも実施しています。
傷口も自然に溶ける糸を使用して皮膚の下で縫い合わせる皮内縫合法を採用することで、自分で糸を切ってしまうトラブルも発生しなくなりました。
このように手術中や手術後のウサギに対するマイナスの影響を極力低減させることによって、手術後は速やかに手術前の状態に回復することが可能となっております。
卵巣子宮の病気発生の可能性の著しい高さと避妊手術に際してのリスクを考慮すると、私は避妊手術の実施を強く推奨いたします。
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