くらた動物病院ブログ

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    ウサギの避妊手術について

    ウサギの避妊手術 必要性や時期、避妊のメリット・デメリットについて

    |川崎市高津区のくらた動物病院

     

    川崎市高津区、宮前区、多摩区、中原区、世田谷区の皆さんこんにちは。川崎市高津区のくらた動物病院です。今回はウサギの避妊手術の必要性や時期、メリットやデメリットについて解説いたします。

     

    ・うさぎに避妊手術は必要?避妊手術の重要性について

    4歳以上の中年期以降のウサギには、子宮疾患の発生頻度が非常に高く、文献による違いはありますが、4歳以上で50%~80%の頻度で発生するとの文献もあれば、6~7歳で

    60~70%の頻度で発生するとする文献もあります。いずれにしても、非常に高確率で子宮疾患が発生することは間違いありません。

    私の経験では、あるご家庭で飼育されていた3歳から6歳までのウサギ10匹全てを避妊手術した結果、全てのウサギに子宮疾患が発生していることを確認したことがあります。しかもこれらの中で症状を発症していたのは1匹だけであり、そのほかのウサギは外見上健康であり無症状でした。

    発生する子宮疾患は、多くの場合は腺癌です。また、子宮内膜過形成の場合も多く見られます。これらの疾患により発生する症状は、血尿として発見されることがほとんどです。当然ながら膀胱内の出血による真の血尿ではなく、子宮内で出血した血液が膣と尿道との接続部から尿に混じって排泄されるために血尿と誤認されます。経験的には尿に血液が混入したウサギの9割以上は子宮疾患であると思われます。

    この出血により貧血の発生を含めた全身の衰弱が発生し、病状の進行により生命に危険が生じます。また、文献によると腹腔内への腫瘍の浸潤は早期に発生し、進行性の肺や肝臓、骨への転移も発生から1~2年程度で発生するとされています。私の経験では、肺や肝臓などへの転移は稀であると考えていますが、十分な注意は必要であると考えます。

    以上の通り、中年期以降のウサギの子宮には、極めて高確率で悪性腫瘍を含めた疾患が発生するため、これらの発生を予防する目的での避妊手術は極めて重要であり、積極的に推奨すべきであると私は考えます。

     

    ・うさぎの避妊手術はいつがいい?適切な時期について

    文献的には6カ月から12カ月齢までに行う方が良いとされています。この理由としては12か月齢までのウサギはそれ以降の場合よりも腹腔内脂肪が少ないためとされていますが、私はむしろ十分に体が発達し、ストレス耐性も幼若時よりも充実していると思われる1歳から2歳前後までの手術の実施をお勧めしています。

     

    ・うさぎの避妊手術のメリット

    避妊手術をする上での最大のメリットは、将来において子宮腺癌を含む子宮疾患の発生を確実に100%予防出来ることにあります。また、発情期が無くなるため、個人差はありますが発情期に気性が荒くなるなどの、ウサギと共に暮らす上での不都合な状況の発生もなくなります。

     

    ・うさぎの避妊手術のデメリット

    第一に麻酔リスクが挙げられます。麻酔をかけただけで心肺停止を誘発する可能性があります。避妊手術を受けるような健康な動物が麻酔を受けた場合の死亡率は、犬では0.05%と

    2008年の文献で発表されています。これに対して同じ文献でのウサギの場合は0.73%と犬と比較すると高い確率となっていますが、内訳としては7652件という極めて多数の麻酔において56件が亡くなっているとの事です。

    また、同じ文献において疾患に罹患しているウサギの麻酔リスクは7.37%であるとされており、健康である場合と比較して約10倍のリスクとなっています。

    当院ではこれまでのところ健康なウサギでの麻酔による死亡例はありませんが、疾患に罹患しているウサギでは麻酔を掛けただけでの突然の心肺停止の例を経験しております。

    子宮疾患に罹患する前に避妊手術を受けることがいかに重要であるかが示されていると思います。

    麻酔リスクに関する文献が書かれた2008年の時点と現在とを比較して、現在のウサギに対する麻酔には大きな進歩があります。声門上器具といわれるチューブ状の装置をウサギの口から喉の奥に差し込んで気管の入り口にチューブの先端を被せることで、呼吸の管理をしっかりと実施する事が出来るようになりました。この器具を用いることにより、麻酔中のウサギの呼吸の状態が正確に把握できるようになり、また自発呼吸が停止した際にも人工呼吸が実施可能となりました。

    この器具が利用できるようになる前までは、このような呼吸状態の把握や人工呼吸の実施が不可能であったため、現在よりも麻酔リスクが高い状況であったのは間違いありません。

     

    ・ウサギの避妊手術後のケアと注意点について

    手術後のウサギには、強いストレスに起因する胃腸鬱滞の発生に注意が必要です。術後1日か2日間は多くの場合には鬱滞気味となりますが通常は自然に回復します。しかしながら3日以上胃腸鬱滞が持続する場合などは胃腸鬱滞の治療が必要となる場合も発生します。

    皮膚の縫合部については、当院では吸収糸を用いた皮内縫合の実施により、縫合糸が皮膚の表面には出ていないため、ウサギが自身で糸を切る心配はありません。

     

    ・まとめ

    どのような医療行為にもメリットとデメリットがありますが、ウサギの避妊手術に関しては、圧倒的にメリットの方が大きいと私は考えます。

    中高齢期になって子宮疾患に罹患し、激しい出血などの影響により全身の衰弱が進行し手術が不適応となってしまうことは、若いうちの避妊手術で100%防止できます。

    2歳前後での避妊手術を実施することを強く推奨いたします。

     

    2023.11.15

    投稿者: くらた動物病院